自然観察&講演会「高山の里山と生きるサシバ」開催報告
観察会雨天延期のため、2週にわたり開催した「高山の里山と生きるサシバ」には、63名の方にご参加いただきました。
7/4開催の講演会(北コミュニティセンターISTAはばたき)では、講師の方と共にサシバの生態、暮らしを通じて里山と生物多様性の関連を学び、これからの里山活用方法を考えました。
7/11の自然観察会では、サシバを探しながら谷津田を散策しました。田畑や小川がつながる谷に小鳥のさえずりが響き、トンボやチョウが舞い、足元ではカエルやトカゲが暮らす環境を体感。
こうした多様な生きものが支え合う里山環境があるからこそ、アンブレラ種であるサシバは毎年高山へ戻ってきます。 自然の損失を止め、回復へ転じる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けて、高山の里山が持つ価値を改めて考える機会となりました。
◆講演① サシバはなぜ高山に戻ってくるのか
講師:与名 正三氏(野鳥写真家・猛禽類調査員)
与名正三さんからは、長年の観察と調査に基づき、サシバの渡りや繁殖、生態についてご講演いただきました。
サシバは、かつて里山で身近に見られた猛禽類ですが、近年は数を減らしています。日本各地の里山で繁殖し、秋には南方へ渡ります。与名さんが長年観察を続けてきた奄美大島は、日本最大のサシバの越冬地として知られ、近年、その生態が少しずつ明らかになってきたことが紹介されました。
「サシバは毎年、同じ谷、同じ木に帰ってきます。」
繁殖地では、3月末から4月頃にまずオスが戻り、その約1週間後にメスが戻ります。毎年同じ谷や営巣木を利用する習性や、オスが餌を運び、メスが抱卵や育雛を担う役割分担について紹介されました。また、餌となるカエルやトカゲ、ヘビ、ムカデ、昆虫などが豊富に生息する、田んぼと森が隣り合う里山環境が、サシバの繁殖に欠かせないことも解説いただきました。
「家族でいられるのは、子育ての間だけなんです。」
雛は親鳥の行動を観察しながら飛び方や狩りを学び、やがて巣立ちを迎えます。講演では、サシバの子育ての様子が、貴重な写真や鳴き声とともに紹介され、参加者はその生態への理解を深めました。
◆講演② 里山と生物多様性の仕組み
講師:田端 敬三氏(近畿大学 非常勤講師)
田端敬三先生からは、景観生態学の視点から、里山が豊かな生物多様性を育む仕組みについてご講演いただきました。
里山は、人が適度に利用・管理することで維持される「二次的自然」であり、田んぼ、ため池、水路、畦、雑木林など、多様な環境がモザイク状につながることで、多くの生きものが暮らせることが紹介されました。
また、田んぼに暮らすカエルなどを餌とするサシバは、田んぼと雑木林が隣り合う里山で繁殖することから、サシバと里山が密接につながっていることが解説されました。
最後に、国が示す「望ましい里山」の姿と高山地区の環境を重ねながら、
「高山は都市近郊でありながら、国が目指す里山の姿が今なお残る非常に貴重な地域である」
と、高山の里山が持つ価値について紹介されました。
◆里山トークセッション
後半のトークセッションでは、岡野聡子氏(奈良学園大学人間教育学部 准教授)、榊泰直氏(九州大学大学院総合理工研究院 客員教授)にもご登壇いただき、高山で実践されているTSUMUGIファームの取り組みをご紹介いただきました。
榊先生からは、東日本大震災をきっかけに「自然と共に生きる暮らし」を志し、高山町での活動を始めた経緯が語られました。また、岡野先生からは、高齢化が進む地域で、耕作放棄地の再生やヤギを活用した循環型農業、地域住民や子どもたちと連携したひまわり畑づくりなど、地域のつながりを育む活動について紹介いただきました。
意見交換では、里山は生物多様性だけでなく、地域の文化や暮らしを支える存在であること、科学技術の発展や社会の変化の中で、里山や自然の変わらない価値をどう位置づけ、保全できるか、それぞれの専門分野や実践の立場から意見が交わされました。
◆自然観察会(7/11実施)
7月11日の自然観察会では、サシバを探しながら高山の谷津田を散策しました。サシバの姿を数名が遠くに確認したほか、カトリヤンマ、マイコアカネ、サトキマダラヒカゲ、タマムシなど、里山らしい生きものを確認しました。
鳥類(8種)
サシバ、オオルリ、ダイサギ、コシアカツバメ、メジロ、ウグイス、キジバト、シジュウカラ
チョウ類(9種)
ウラギンシジミ、ヤマトシジミ、キタキチョウ、ヒメウラナミジャノメ、サトキマダラヒカゲ、コミスジ、ベニシジミ、ツマグロヒョウモン、シャクガ類(未同定)
トンボ類(8種)
シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、カトリヤンマ、オニヤンマ、マユタテアカネ、マイコアカネ、ウスバキトンボ、クロイトトンボ
その他昆虫類(17種)
ヒメマダラナガカメムシ、セスジカメムシ、キマダラカメムシ、タマムシ、キマワリ、ミイデラゴミムシ、スナゴミムシダマシの仲間、ヒメギス、サトクダマキモドキ、チュウゴクアミガサハゴロモ、イナゴ類(未同定)、ヒシバッタ類(未同定)、アメンボ、マメコガネ、ムネアカオオアリ、ハナバチ類(未同定)、オオセイボウ
両生類(4種)
トノサマガエル、ツチガエル、アマガエル
爬虫類(2種)
ニホントカゲ、カナヘビ
合計:47種
◆参加者の声
<感じたこと・考えたこと>
里山は近くでは山添村しかないと思っていましたが、こんな身近に生物多様性が豊かで、サシバが営巣する里山があることを初めて知りました。
サシバの渡りのルートや、里山とのつながりを知ることができ、とても面白かったです。
高山の自然の豊かさを再認識しました。開発が進む中でも、このような里山を残していきたいです。
TSUMUGIファームの取り組みが素晴らしいと思いました。地域一体となった活動が大切だと感じます。
サシバが絶滅危惧種であることを初めて知りました。地域の宝として守っていかなければならないですね。
企業や自治体、住民が集団コミュニティを再形成し、「里山経済」のバージョンアップを実践していくことで、地域の課題を解決できればと思います。
<こんなことがしてみたい!>
子ども向けキャンプ場で、竹を使った「バウムクーヘン作り」など、楽しみながら高山を知ってもらえる場所づくり。
地元の「次世代」を現実に巻き込める活動。
竹林の整備を地域ぐるみで取り組めるような仕組みづくり。
里山での環境保育・環境教育イベント(観察と勉強がセットになったもの)。
観察とBBQ、鍋と流星観察(ペルセウス座流星群・ふたご座流星群)など、レジャーを組み合わせたイベントにも取り組んでみたい。
自然環境教育とレジャーを組み合わせ、里山保全につながる事業。
企業を巻き込んだナショナルトラスト。
参加者の皆さんからは、「こんなことができたらいい」「こんな里山にしたい」というアイデアも数多く寄せられ、学びや遊び、農、地域づくりなど、さまざまな可能性を感じる機会となりました。
皆さんなら、この里山でどんなことをしてみたいですか。
自然環境保全協会奈良では、これからも地域の皆さんとともに、高山の里山の魅力を未来へつなぐ活動を続けていきます。